【感想】十二国記『図南の翼』| 12歳の小生意気娘と侮っていてすみません。。
やってきました、図南の翼。
いつものメンツが出てこない、番外編のような位置付けなのかしら。
ただ、珠晶の評価含めてこの物語はめちゃくちゃ人気ですよね?そんなイメージがあります。
個人的にはやはりメインストーリーどっぷり好きタイプなので、本作での感情たかぶり度はすこし落ち着いていたかな。
ただ、とっても読みやすかった印象。気づいたら終章迎えてたみたいな。
過去作を読んでいる分、十二国記の常識がすでにインプットされているからなのか、あまり政治の話とか難しい部分が無かったからなのか。
確かに、ストーリーは単純明快で分かりやすかった気がします。
王不在で荒廃する恭の国で、商家の裕福な家庭で育った12歳の少女珠晶が、偶然出会った黄朱(黄海で妖魔狩りをする浮民)の頑丘、謎のイケメン利広と共に、王になるため危険な黄海での旅を経て昇山する話。
珠晶はなかなか生意気というか小賢しいというか、十二国記の登場女性として陽子を見慣れていたので、ちょっと苦手かも...というのが第一印象でした。(風の万里でちらっと登場したときも)
天命とは言え、12歳の小娘を王にしちゃうって大丈夫??
(まあでも王がいるってだけで荒廃は抑えられるからいいのか...)
結局その後90年くらい?は王でいますからね、珠晶ちゃんも。本作では描かれていないですが、やはり年少で即位した分苦労もたくさんしたんだろうな...と思うと、愛らしく思えてくるのは歳のせいでしょうか。
それにしても、供麒に出会い頭でビンタ喰らわすのは大物すぎる。
なんで私が生まれた時に来ないの、大莫迦物っ!って。
女王×麒は慶もそうですけど、全然タイプが違うから面白い。
でもたしかに、王気っていつ宿るものなのか。生まれた時から備わっている訳ではなく、後天的なもの...?珠晶でいえば、彼女自身が昇山してやる!って決意をしたときなのか。(王気が元々備わってるから昇山の決意が生まれたのか...)
それでいうと、特に自分で決意した訳ではない尚隆や陽子のような胎果の王とか、前景王(予王だっけ?)は絶対昇山するタイプじゃないし、そのあたりは王気がいつ宿ったのだろうか。。謎だ。。
昇山の途中で幾度となく珠晶が訴えていたことで、どうして黄朱や剛氏は自分たちの持つ知恵を雇人以外に教えてやらないのか、とありましたね。ケチらないでみんなが生き延びるために教えてあげればいいじゃない、と。
子供の発想なのか、お人好しの考えなのか。私ら読者としては、剛氏も連れずに黄海甘く見てるやつなんてさっさと脱落してしまえよ、と思ってしまう訳ですが。
珠晶も旅を進めるにつれ、人を犠牲にしないと生き延びられないことに気付いていくのですが。それでも、可能な限り人を助けて、鼓舞して進んでいく。頑丘と喧嘩して進路を別った後に、室季和に見捨てられた従者の面倒をきっちり見ていたのは本当に素晴らしい。
このリーダーシップというか、上に立つ者の資質が垣間見える感じ。こういうところが王なのかしらね〜と一人感心しておりました。
そして本作は懐かしの人が出てきましたね!
犬狼真君こと、更夜。
東の海神で斡由が討たれてから、黄海に戻っていたんですかね...昇山する者にとっての守護神的な感じで讃えられていましたね。連れている妖魔はきっと「ろくた」なのでしょう...
真君に助けられたこともそうですし、そもそも頑丘や利広という強烈助っ人がいたことが既に王の器。
頑丘は無愛想で珠晶ともしょっちゅう喧嘩してましたけど、お供としては本当に頼り甲斐があるし、なんだかんだ珠晶のことも認めているというか。珠晶登極後はどうしたんでしょう?官吏になったのか、それは性に合わないと断ったのか。どちらにせよ、珠晶との関係は変わらないでいてほしいなあと。
利広はこの掴めない感じがいいですね!最後に明かされますが、奏の宗王の次男坊で?放浪癖があって宗王や兄妹からもこいつは...みたいな感じで諌められていて?でもちゃっかり恭国との繋がりをゲットしちゃうあたり出来る奴なんですよね。。でもこの食えない人となり、敵か味方か判別しづらくてめっちゃ怖くないですか?私が珠晶だったらかなり警戒してしまうわ...イケメンだけど。
タイトルの「図南の翼」
本当に存在する故事成語のようですね。
大きな事業を遠い地で成そうとする志や計画のこと。
まさに遠い恭の地から南路はるばる昇山を目指してやってきた珠晶たちの旅であり、しっくりくるタイトルだなと思いました。
幼い珠晶の登極後の話も読んでみたいですし、他の国とのお話もあればいいなあなんて。
まずは利広が身分を明かした時の珠晶の反応を見てみたい(笑)
さすがに供麒に対してのようにビンタはしないでしょうけど、なんで言ってくれないのよ!と詰問していそう。
そんな後日談もぜひ覗いてみたいですね。