一生夏季休暇

読んだ本の感想を残します。ネタバレしかありませんので悪しからず。

【感想】十二国記『丕緒の鳥』| 一言も出てきてないのに尚隆を感じられるなんて。

短編集、でした。

あらすじ見てるといつものメインキャラクターが出てこない風味だったので、読み飛ばそうかなとかも思ったのですが、刊行順遵守組(?)としてはやはり読むべきよなと。

結論、いい。

4話とも主人公は官吏だったり民だったり。言ってしまえば地味な風景が続くのですが、その背景には私の良く知る十二国が垣間見えるのです。なんか奥ゆかしくて萌える。

そんな短編を1話ずつコメントさせていただきたく。

丕緒の鳥

陽子が登極するかしないかくらいの慶国のお話。よー分からん陶器でできた鳥(陶鵲)を撃ち落とす儀式(説明が適当すぎる)を管轄する丕緒という人物が、新王(陽子)登極に合わせて陶鵲作れと言われるものの、乗り気になんねーなとぶつくさ言ってる話です(合ってる?笑)

無能な女王が続いて荒んでいる国情がすごく伝わってくるし、射儀そのものの意義に対する不信感、どうせ新女王も政に興味なく民を棄てるような奴だろうという諦めのような空気、を丕緒がぷんぷん匂わせているわけですが。

新王に何か感じてもらいたいと考えて新作の陶鵲を作って披露して後、陽子は丕緒を呼び出して話すんですよね。

どう言えばいいか分からないが、胸が痛むほど美しかった、と。丕緒の想いが伝わったのかな、というシーンです。

このちょっと不器用な、でも真摯な伝え方が陽子らしくていいですよね。好き。

 

②落照の獄

これはひたすら考えさせられる話でした。

柳国の話なので、風の万里で国が傾き出しているのでは...と延王延麒が言ってたくらいの知識しかなかったので、余計な感情なく(笑)没頭しておりました。

端的に言うと、死刑ありかなしか論ですね。

二十数もの犠牲者を出した凶悪殺人犯。柳では死刑はするなとの王のお達しがあった。しかし民意は死刑を求める声が圧倒的。ついには王も(死刑にするしないは)官吏の判断に任せるよと放任なさる。

舞台は架空の十二国ですが、死刑の是非が本当に難しいということはどこでも一緒。これ答え出ないんだよなあというモヤモヤを感じながら、結局最後もうーんというスッキリしない感で終わりましたね。でもこれがリアルですよね。。

 

③青条の蘭

お国を救うお薬草を王に届けるお話。(ですよね?)

このお話のズルいところは、最後の2ページ?くらいのところまでどこの国が舞台か明言しないところですよ。

ちなみに私は事前のネタバレでこの話は雁国らしいぜ...と知っていたので、どこで尚隆出てくるの!!ふんぬー!とずっとヤキモキしてました。

でもあまりに言及しないもんだから不安になりましたよね。あれ、記憶違いでこれ雁じゃないんだっけ...もしかして慶かしら...と。

そんなこんなで最後に

関弓!玄英宮!!

とおなじみワードが出てきたところで私スタンディングオベーション

(州の名前に詳しい人だったらもっと早くに気づいたのかしら)

まあ最後まで尚隆の名前も姿も出てこないんですけどね。きちんと尚隆が届けを聞き入れて、祈ってくれたんだなと分かるエンディング描写。粋だなあ〜と感銘を受けました。

尚隆もだけど、帷端も名前は直接出ないですが言及されていましたね。王に取り継いでくれそうな遂人が新たに就きましたようですよ、とさりげなく。

間接的にしか本人出てきてないのにエモみを感じるこの読書体験!!読んで良かった丕緒の鳥

 

④風信

こちらもあまり慶国であること明言されてなかったですかね。

女を国外に追放したり殺害して...という描写で先代の予王がやらかした後の慶国であるとわかります。

主人公の蓮花は疎開先の盧で暮らすことになりますが、そこでは暦を作る仕事を担っている官がいて、蓮花もその仕事を手伝うようになり。。

この暦作りっていうのが最初ピンと来なくて、カレンダー作ってるってこと?とか思っていたんですが、「この時期にこの農作物を植えて〜」とかかなり実用的な内容を盛り込んだカレンダーのようで。民が農業をして生活をしていくための必需品というわけでした。

作中に出てくる暦作りの作業?が地味で地味で...蝉の抜け殻をひたすら集めたり、遠く目標物がどのくらいの曇り度合いかをひたすら計測したり...
こういう職業って、昔は実際にあったんですかね?

地道な職業のお話なのであまり華やかな感じが終始続きますが、こういう下支えの仕事があって国が成り立っているということを感じさせる一編でした。

陽子が新王となって国は立て直されていくでしょうが、きっとこの盧での営みは変わらないんだろうなあと。

 

という感じで、陽子やら尚隆やらの影をささやかに感じる裏エピソード4編。私登場人物の名前すぐ忘れがちなので、②と③に関しては主人公の名前すら書いてないw

ですが本当に、それぞれがそれぞれの国で、役職に真摯向き合って生活をしている様というのが感じられて、より一層十二国記の世界をイメージすることができた気がします。

いつものメインストーリーでは王とか麒麟とか天に近いところ目線で見ることが多いので、どちらかというと地に近い職業を通じて見る国の風景は新鮮ですね。

とはいえやっぱりメインストーリーが気になって来ちゃいますのでね、ずずいと次のシリーズを読み進めていきたいと思います!